【#朝鮮日報】【コラム】中国発感染者のミステリー

海外から入国した感染者802人のうち中国からの感染者はわずか17人

ゲノム情報から感染経路の把握は可能だが共有情報はコンゴ36件、韓国12件のみ

 米国のニューヨーク・タイムズ紙(NYT)が「中国が自国で最初にコロナ患者の発生を発表した昨年12月31日以降、中国から米国にやって来た入国者は43万人」とした上で「2月初めに入国が禁止されたのは遅すぎたのでは」と指摘した。米国は最近、1日当たりの感染者数3万人、死者数1000人に上り、累積患者数は世界で最も多い。NYTの記事には中国への恨みが感じられる。韓国政府も最近は海外からの感染者流入への警戒をぐんと強調している。欧州と米国から入国する感染者が多いということだ。中国からの感染者流入への懸念が高かった今年1-2月には見せなかった姿だ。このような指摘に対しては、韓国政府は逆に「韓国人が中国から感染源を持ち込んでいる」と反論した。中国の顔色をうかがっているのはもはや誰もが知っている。

 韓国政府の報道発表資料を見るたびに、中国関連の統計はうさんくさい気がする。今月7日時点における韓国国内の感染者数約1万人のうち、802人が海外からの入国者で、うち中国から来た感染者は17人(2%)だという。300-400人に上る欧州・米国からの感染者の5%レベルだ。どうすればこんなことがあり得るのか。中国では今年1-2月、欧州・米国は3月に入って感染者数が爆発的に増加した。当時、中国からの入国者は今とは逆に欧州・米国からの2-10倍も多く入ってきていた。それでも中国から来た感染者の数がはるかに少ないため、統計がおかしく思われるのだ。政府の疫学調査に問題があることも考えられる。

 疫学調査とは感染経路を把握することだ。患者がいつ、どこで、誰から感染したのか、感染者の証言に基づき動線を把握しなければならない。しかし実際は感染者よりもウイルスの足跡をたどる方がより正確だ。「AがBから感染したのであれば、二人のウイルス・ゲノム情報には必ず共通点がある。ゲノム情報が分かれば、患者が感染した時期や地域はもちろん、誰から感染したかも分かる。人間とは違ってゲノム情報はうそをつかない」(ゲノム専門企業・テレジェンバイオのキム・テヒョン首席研究員)

 ゲノム分析は世界で多くの国が活用している。ゲノム情報を解読し、世界保健機関(WHO)が運営する「国際インフルエンザ・データ共有イニシアチブ(GISAID)」サイトに掲載し、共有している。これによって自国の患者の感染経路が簡単に把握できる。7日午後の時点で57カ国から3000件以上の情報がアップされている。米国(621件)、英国(350件)、中国(242件)の順に多いが、韓国からは12件しかない。韓国よりも人口がはるかに少ないアイスランド(151件)やフィンランド(40件)はもちろん、アフリカのコンゴ(36件)よりも少ない。ゲノム情報の解読にかかる費用は1件当たり30万ウォン(約2万7000円)ほどだという。韓国国内の感染者の10%だけ解読しても数億ウォン(数千万円)で済む。この程度の分析を行うだけで、国内にいる感染者の感染経路、時期などが一目で把握できるという。

 崔起栄(チェ・ギヨン)科学技術情報通信部(省に相当)長官はコロナに対応する国際協力の次元から、先月初めに米国・日本・ドイツなど主要11カ国の科学技術関連の長官・諮問官らと1時間にわたり国際画像会議を開催した。ここで議論された主な案件の一つが「ゲノム情報共有の活性化」だったという。文在寅ムン・ジェイン)大統領は来月開催されるWHO総会で、アジア代表として基調講演を要請したWHO事務総長に「韓国政府は一貫して開放性、透明性、民主性という三大原則に基づいて対応している」と説明した。長官や次官たちも外信記者へのブリーフィングなどの際、暇さえあれば強調するのが開放性だ。ところがコンゴよりも情報共有をしていないことはどう解釈すべきか。現時点で公表された12件のゲノム情報は、そのほとんどが中国で感染したケースだという。これによって武漢はもちろん、北京や広東省など中国全域から流入したことが分かっている。これらの情報を多く解読すればするほど、中国発という感染の実態が明らかになるため、韓国政府はゲノム解読をためらっているのではないかとの指摘もある。事実でないことを願うばかりだ。

朴恩鎬(パク・ウンホ)論説委員